絶対領域
朦朧としてきた意識を、誰かの声が巡る。
――『強くなりたい。どんなことがあっても、あなたを守れるように』
聞いたことのある、声だ。
……そうだ。
誰か、じゃない。
紛れもない、私の、声。
私の守りたい人は、誰なのだろうか。
私はその人を、守れたのだろうか。
心音のリズムに合わせて、激痛が大きくなる。
瞼の裏の暗闇が、深くなっていく。
その闇に意識を喰われ、飲み込まれていった。
「“あなた”は……だ、れ……?」
また一粒、涙が流れた瞬間。
頭の奥の奥にある、パンドラの領域。
そこにしまい込んだ傷だらけの箱から――かちゃり、と鍵が開く音がうっすら反響した気がした。