絶対領域
私たちも、このショーの虜【トリコ】だ。
ショーも終盤に差し掛かった時。
突然バンちゃんがステージを降りた。
「萌奈ちゃん」
「え?」
「はい、これ」
目の前で立ち止まったバンちゃんに手渡されたのは、一輪の花。
太い茎を守るように、白とピンクの花が咲いている。
これ、なんて名前なんだろう。
どこか繊細で、美しい花だ。
成り行きで受け取っちゃったけど、綺麗にラッピングされてるし、誰かのプレゼント用?マジックの小道具?
ど、どうすればいいの!?
バンちゃんと花に視線を行ったり来たりさせていると、バンちゃんが片手で「3」を示した。
「3、2、1……!」
カウントダウンをして、パチン、指を鳴らせば。
あら不思議。
一輪の花が、一瞬にして蝶々に変身する。
「うわあっ!!」
色とりどりの蝶々が、天井まで高く舞いあがっていく。
幻想的な光景に、観客の目は奪われる。
「……あれぇ?」
「よ、よく見たら、あ、あの蝶々……」
「折り紙じゃん!」
持ち前の反射神経の良さで、せーちゃんが両手で捕まえた蝶々は、なんと紙製。
たくさんの蝶々を全部作ったのかな。
そもそもどうやって作ったら、あんな飛ぶの?
すごすぎる。
もう一度正面を向けば、もうそこにバンちゃんはいなくて。
いつの間にかステージ上に戻っていた。