絶対領域





誰もがショーに釘付けになっている中、ただ一人、オリだけはステージではなく私を見据えていた。



せーちゃんにもらった、折り紙の蝶々。

ソレを手のひらに乗せて愛でる私は、何も知らない。



オリの、陰った視線も。



「……さっきの花は、クリオメ。なんで素野が、萌奈にあの花を……?」



バンちゃんから受け取った、あの一輪の花のことも。




クレオメ――花言葉は、秘密の時間。


まるで、“あの時”を示唆しているよう。




「素野は一体……」


オリの独白をかき消すように、会場が喝采で包まれる。



マジック&ダンスショーが終わり、幕が下りていく。


最後に窺えたバンちゃんの表情は、ひどく穏やかだった。





私は、まだ知らない。

バンちゃんの真意も、何も。







ショー終了後。

体育館の外で、制服姿のバンちゃんと合流した。


皆で感動と感想を伝えると、バンちゃんは照れくさそうにお礼を言った。



オリだけ、バンちゃんを怪訝そうに一瞥してたけど、どうしたんだろう。




「次はどこ行く予定?」


「えーっと……」


「ホストクラブ!!」



バンちゃんの質問に私が答えるより早く、みーくんが挙手をして提案した。


他の皆も、うんうん、と頷いている。



私とバンちゃんが反対するわけもなく、満場一致で決定した。




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