絶対領域




あず兄としん兄は、とりあえず私たちをテーブルへ案内した。



教室はとにかくゴージャスに飾り立てられている。


バラの造花もあれば、本物のバラの香りもする。



きらびやかな世界観に、白鳥の衣装。

……完全に浮いてる気がするのは、私だけ?




ソファーに見立てた椅子に、あず兄としん兄も一緒に座る。



私のクラスの喫茶店とは違って、ここはホストクラブだから、2人はホスト役としてこのテーブルに居るのだ。


限られた時間だけでもイケメン2人を独占できる、という口コミが広まり、あの行列ができたらしい。




「萌奈、その恰好って……例の童話喫茶のやつか?」



注文した飲み物が運ばれてくると、隣のあず兄が真っ白な衣装を眺めながら聞いてきた。



「うん、そう。私は白鳥の」


「すげぇ可愛い」



食い気味で言われた。

私まだ、言い終わってないんですけど。



「あず兄としん兄も、いつもと雰囲気ちがくて、新鮮だな」


「2人ともかっこいいよ!」



みーくんの素直なコメントに、あず兄としん兄はやや恥じらう。



シックでシンプルなスーツや、鎖骨が覗くほどはだけたシャツは、大人っぽくて色っぽい。


ワックスで仕上げたヘアスタイルも、よく似合ってる。



< 335 / 627 >

この作品をシェア

pagetop