絶対領域
あず兄としん兄は、とりあえず私たちをテーブルへ案内した。
教室はとにかくゴージャスに飾り立てられている。
バラの造花もあれば、本物のバラの香りもする。
きらびやかな世界観に、白鳥の衣装。
……完全に浮いてる気がするのは、私だけ?
ソファーに見立てた椅子に、あず兄としん兄も一緒に座る。
私のクラスの喫茶店とは違って、ここはホストクラブだから、2人はホスト役としてこのテーブルに居るのだ。
限られた時間だけでもイケメン2人を独占できる、という口コミが広まり、あの行列ができたらしい。
「萌奈、その恰好って……例の童話喫茶のやつか?」
注文した飲み物が運ばれてくると、隣のあず兄が真っ白な衣装を眺めながら聞いてきた。
「うん、そう。私は白鳥の」
「すげぇ可愛い」
食い気味で言われた。
私まだ、言い終わってないんですけど。
「あず兄としん兄も、いつもと雰囲気ちがくて、新鮮だな」
「2人ともかっこいいよ!」
みーくんの素直なコメントに、あず兄としん兄はやや恥じらう。
シックでシンプルなスーツや、鎖骨が覗くほどはだけたシャツは、大人っぽくて色っぽい。
ワックスで仕上げたヘアスタイルも、よく似合ってる。