絶対領域




私を安心させようと、あず兄は私の頭を撫でる。


その手も、傷だらけだった。



「……本当に?」

「ああ」


視線だけを持ち上げると、灰色の瞳に反射した私が見えた。



「それに、この傷でもっと男らしく見えるだろ?」



ニッと一笑するあず兄を横目に、しん兄は不愛想な表情をわずかにゆるめた。



私を慰めようとしてくれてる。

下手くそだけれど、安らぐ。




「お、男の勲章みたいで、わ、ワイルドですしね!」


「プッ……わ、ワイルドってぇ……ユカ最高~」


「あはは!あずきがワイルドとかないわー!」


「てか、いつまで姉ちゃんにくっついてるつもりだ!離れろ!むさくるしい!」




ゆーちゃんとバンちゃんは爆笑し、せーちゃんは相変わらずシスコンスイッチをオンにして威嚇している。




「はっはっはっ。神亀はいつも賑やかであるな」


「そうだな!こっちまで楽しくなる!」


「……お、俺ら双雷は、これ以上に元気っすよ!」


「そ、そこは張り合わなくてもいいんじゃ……?」




喜色が伝染したオウサマとみーくんに、なぜか闘争心むき出しのランちゃんをゆかりんが疑問視する。




こうやって、意味もなくわいわい騒いでる雰囲気が、とても愛おしい。



大切にしていきたい。

友達と過ごす、日常を。




これから先、何が起ころうとも。




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