絶対領域
「お前のことを見てたら、わかる」
「……そっか。……そっかぁ」
視線で追ってるのは、私ばっかりだと思ってた。
だけど、オリも私のこと、見ていてくれてたんだね。
嬉しいな。
夢みたいだ。
……夢じゃないよね?
“あの時”みたいに優しいオリが、目が覚めたら消えてしまったらどうしよう。
不安に駆られるほど、息が苦しくなっていく。
ドキドキとズキズキがひしめき合って、体温が上昇する。
「萌奈」
「……っ、オリ」
愛しい囁きに、瞼をかすかに持ち上げた。
意識はあやふやで、熱に浮かされる。
現実と夢の境目が、もう、見当たらない。
「今、薬、飲ませてやる」
オリはいつの間に準備していたのか、保健室に設置された水道からコップに溜めた水を、口に含んだ。
ギシリ。
枕元に手を置き、ベッドを軋ませる。
「お……り、っ」
一瞬で距離が、ゼロになる。
重ねられた唇の隙間から、水が流れ込んできた。
ごくりと飲み込めば、唇が一度離れて、またついばむ。
口の端から水が垂れても、かまわずにお互いに酔いしれた。