絶対領域




ハッとして目を覚ました。


ツー、とこめかみを伝って、涙がこぼれる。



どうして、心にぽっかり穴が空いたみたいに、悲しいの?




「萌奈ちゃん、起きた?」

「っ!」


反射的に振り向いた。


オリ……!?



しかし、そこにいたのはオリではなく、バンちゃんだった。



「具合どう?」


「……うん、大分よくなったよ」



あからさまにガッカリしてしまったのに、バンちゃんは何ごともなかったように接してくれた。


その気遣いに、救われる。




「薬が効いたみたい」


「え?薬?」


「う、うん」


「……うちの学校に医師免許を持った保健医はいないから、投薬は原則禁止なんだけど……」


「バンちゃん?どうしたの?」


「……いや、なんでもない。元気になったようでよかったよ」




あ、ごまかされた。

ボソボソなんて言ってたんだろう。


まあ、私も空気を読んで、あんまりつっこみはしないけど。




「他の皆は?」


「在校生組は各クラスに戻って、客組は帰ったよ」



へ?帰った?



上半身を起こして、窓の外を眺める。


空はすっかりオレンジ一色になっていた。



「ぶ、文化祭は!?終わっちゃったの!?」


「ついさっきな。今は片付け中なんじゃないか?もう少ししたら後夜祭が始まる」



……まじか。


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