絶対領域
嬉しい、けど。
ちょっと心残りだな。
この白鳥の衣装をあまり見せびらかせなかった。
「クラスメイトと仲良くなれてよかったな」
「うんっ!」
つい最近……というか昨日までは、よそよそしいクラスメイトとの馴染み方に本気で悩んでいた。
だから、友達ができて、自分でもびっくりしてる。
文化祭マジックって、本当にあるんだね。
「クラスメイトだけじゃなくて、」
ふにゃふにゃしたニヤけ顔のまんまの私に、バンちゃんは表情やトーンを変えることなく、続けて言う。
「緋織とも、仲がいいんだな」
当たり障りない世間話をするテンションで、投下された。
緩みっぱなしだった表情筋が、ピシリ、と固まる。
「萌奈ちゃんに熱があることに緋織が一番最初に気づいてたし、起きる前に『オリ』って叫んでたし」
……え。
ちょ、待って、これ。
どうリアクションするのが、正解なんだろう。
バンちゃんは、どういう意図で、この話を?
単なる発見?感想?
それとも……。
「えっと、その……」
何か。
何か、言わなきゃ。
だけど、思考回路は鈍っていて、言葉が出てこない。