絶対領域
・万side
――この街には、天使と悪魔が棲んでいる。
ずっと、会いたかった。
“天使”の君に、“悪魔”として。
「バンちゃんが、悪魔……?」
萌奈ちゃんは息を呑み、軽くパニックになってる。
突然明かされたらビビるよな。
知り合いが悪魔だなんてさ。
……これでも一応、ヒントを示してきたつもりなんだけど。
小さくて熱い右手から、ほのかに花の香りがした。
クレオメの香りだろうか。
ショーの時のわかりやすいヒントですら、萌奈ちゃん、スルーしちゃうんだもんなぁ。
緋織は察していたようだけど。
「悪魔って、あの悪魔?」
「そう」
「噂の?」
「そうそう」
「本当に悪魔なの!?」
「そうそうそう」
こくこくと頷いても、萌奈ちゃんは完全には受け止められていないようだった。
だが、萌奈ちゃんが天使だと知っていることに関しては、触れてこない。
「萌奈ちゃんは、悪魔が何者かは知ってるんだ?」
「う、うん。知ってるよ」
萌奈ちゃんはさも当然のごとく言ってるけれど、知ってる人はそう多くはない。
さすが天使、と言うべきか。
「悪魔って、情報屋でしょ?」
大当たり。