絶対領域
不意に、カタン、と扉のほうから音がした。
気配を感じたが、気のせいだっただろうか。
「……あ、そっか。バンちゃん、情報関係が得意だったね。なんでも知ってるし」
「信じてくれた?」
「で、でも、バンちゃんってあず兄にスカウトされたんじゃなかったっけ?」
よく憶えてるね。
その話をしたのは、花火をした日だっけ。
じゃあ、これも憶えてるかな?
「俺が不良になった理由、憶えてる?」
「もちろん。『なんとなく』って言ってたよね」
即答か。
すごい記憶力だな。
若干呆気に取られながらも、やわくまつ毛を伏せた。
噂でしか耳にしたことのない、あの悪魔のネタバレをされて。
ただでさえ悪魔の噂はあんまりいいもんじゃないんだし、すんなり「はいそうですか」って理解できるわけないよな。
疑って当たり前。
萌奈ちゃんが信じるのを願うんじゃなくて、俺が信じさせないと。
「本当に、なんとなくだったんだ」
だから、俺のこと、教えてあげる。
萌奈ちゃんにだけ、特別に。
なぜ、俺が今、ココにいるのか。