絶対領域




「ほら、誰にでもあるだろ?自分の価値観が他人と違う時とか、自分の正しさを否定される時とか」



誰だって一度はあるはずだ。


自分の常識が通用しなくて挫折したり、悩んだりしたことが。



俺にもある。



初めて俺の価値観を否定したのは、姉だった。



バイオリンを習っている姉は、それだけが生きがいで。

生きる意味だと、本気で思ってる人だった。


対して俺は、何にも縛られたくなくて自由に生きてる。



姉の生き方が窮屈そうで、ある日俺は言ったんだ。



『バイオリンにだけ固執しないで、もっと視野を広げたら?そしたら楽に生きれるのに』


『あたしはバイオリンに命を懸けてる。それくらい、やりがいもあるし、何よりバイオリンを弾いてる時が一番楽しい。たとえ家族だろうと、あたしの生き方に口出ししないで』



そう、怒られてしまった。



その時、あぁそっか、って納得した。

そういう考えもあるんだな、って。




家族でもこんなに考え方が違うんだったら、クラスメイトや近所の人はどうなんだろう。


ひとつ理解したら、またひとつ疑問が生まれた。



それが、全てのきっかけだった。




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