絶対領域
「俺は、他の奴よりそれを深く考えちゃって、試したくなったんだ。自分の正義を。そして、自分のとは違う正義の在り方を」
幼い子どもらしい、探求心だった。
……幼い、といっても、中学生の頃の話だけれど。
今思えば、やっぱり、幼い。
「そのために、なんとなく、“こっち側”の世界に踏み入れた。一番手っ取り早くて、わかりやすそうだったし」
裏の世界は、正義と悪がはっきり分かれている。
試すにはもってこいじゃないか。
「中2の頃だったかな……身一つで、不良になった。初めのうちは何度も死にそうになって、大変だったよ。こっちの価値観を調べたくても、相手が強すぎて、太刀打ちできなくてさ」
あはは、と苦笑いすると、萌奈ちゃんは意外そうにパチクリと目を瞬いた。
今じゃ「悪魔」と呼ばれて、最強扱いされてるけど、俺にだって初心者時代があった。
いきなり強かったわけじゃない。
あの頃は、どれだけ頑張っても、弱さに打ち勝てなかった。
何回後悔したか、わからないくらい。
「それでも、諦めたくなかった。諦めたら、自分の正義をないがしろにしてしまう気がして、嫌だったから」
後悔する度に、思い返した。
なぜ俺はココにいるのか、と。