絶対領域
今も昔も、正義とは何か、ちゃんとわかってはいない。
曖昧なまま、自分の正義を掲げてる。
だからこそ、相手の正義を拒絶したりはしない。
……できないんだ。
「毎日必死に、不良として生き続けた。暴走族とか極道とかいろいろ関わって、どうでもいいものから極秘情報まで手に入れて、悪い奴らを潰していって……自分が正しいと思ったことを、自己満足でやってた」
最低な手段を使ったこともある。
味方にさせたつもりで騙したり、スパイをして裏切ったり、秘密にするはずだった情報を売ったり……。
とにかくなんでもやった。
俺のやり方がどこまで通用するのか。
俺にとっての悪が、相手にとっては正義になるのか。
答えのない疑問を、ずっと、試してた。
「そんなことしてたら、いつの間にか情報屋みたいなものになってた。しばらくして、今度は『悪魔』っていう通り名までついた」
由来は……なんだったか。
手口が汚いから?
悪魔に魂を売る覚悟で、情報のやり取りをさせられるから?
……まあ、そんな感じの理由だった気がする。
相変わらず、悪魔の印象は最悪だな。
「あず兄にスカウトされたのは、その後?」
「ああ、そうだよ」