絶対領域
悪魔として名が知れていった、ある秋の夜。
いきなりスカウトされて、腰が抜けそうになったよ。
『情報をくれ』『手を貸してくれ』
そういう頼み方じゃなくて。
あずきの場合は、一癖も二癖もあった。
ひとつの依頼が終わった、寂れた路地裏で。
急に背後から『おい、悪魔か?』と声をかけられて、振り向いたら。
『お前、俺のものになれ』
あずきが真面目な顔して、ものすっごいキザなセリフを言ったんだよ?
爆笑もんだよね。
そこで笑わなかった俺を褒めてやりたい。
『言う相手、間違ってません?』
『お前、悪魔なんだろ?』
『そうだけど……』
『なら、間違ってねぇ』
『あ、じゃあ、言葉のチョイスが間違ってるんじゃ……?』
『それも間違ってねぇ!』
せっかく俺が気を遣ってやったのに、逆ギレされた。
第一印象、意味不明な男。
まあ、世の中にはいろんな人がいて、不良やヤクザは特に短気な人が多くて慣れてるけど。
『もう一度言う。俺のものになれ、悪魔』
『いや、俺、そういう趣味ないんで』
『俺のために働けっつってんだよ!!』
逆ギレ、パート2。