絶対領域
謎めいた密会
文化祭が終わって、1週間。
あず兄とせーちゃんの過保護が爆発して、
『まだ咳してる!今日も休まなきゃダメ!』
『まだ顔色悪いな。今日も学校休め。いいな?』
と、脅さ……こほんっ、異常なまでに心配されて、否が応でも欠席させられた。
そして今日、久しぶりの登校。
1週間ぶり。
窓際の席が心地よくて、眠ってしまったけれど。
「……ちゃん」
「んん……」
「萌奈ちゃん」
鈴を鳴らすような可愛らしい声につられて、目を覚ました。
机に突っ伏していた上半身を起こし、伸びをする。
「おはよ、萌奈ちゃん」
クスッと笑って挨拶してきたのは、文化祭を機に仲良くなった、衣装係の子だ。
おはよう、と返すが、もう辺りは夕日に照らされている。
放課後だ。
「お迎えが来てるよ」
「へ?」
ほらあそこ、と指差されたほうを見てみたら。
あず兄が仁王立ちをして、後ろのほうの扉を塞いでいた。
なんであんな堂々としてるの?
目立ってるし。
相も変わらず、女の子たちはあず兄にきゃっきゃっ騒いでる。
灰色の瞳と、重なった。
……うげ。
あれ、確実に、また体調が悪くなって伏せていたんじゃないかとか案じてる顔だ。