絶対領域
早く誤解を解かないと。
めんどくさいなぁ。
ため息混じりに、帰りの支度を急いだ。
「起こしてくれてありがとね」
「ううん、全然!」
「……あの衣装も、ありがとう」
実は、着て帰ってしまったあの「白鳥の湖」の白鳥の衣装を、プレゼントしてくれたのだ。
早退したその日に電話をくれて、その時に『萌奈ちゃんに持っていてほしいんだ』と言ってくれた。
すごく嬉しくて、思い出の記念に部屋に飾って。
毎晩、あのオルゴールを聴きながら、眺めてる。
「あの衣装は、萌奈ちゃんの元に在るべきだと思ったの」
私をイメージして、作ってくれたんだよね。
正体を知らないはずなのに、『白鳥の衣装を作ってる時に、天使が頭に浮かんだんです』って話された時はちょっと驚いたよ。
「大事にするね」
本当は、天使なんて柄じゃないけれど。
せめて真っ白でピュアな想いを、汚してしまわないように。
支度が整い、椅子から立ち上がった。
カバンを持って、友達に手を振る。
「またね」
「うん、またね、萌奈ちゃん!」
他のクラスメイトとも、気軽に挨拶を交わすくらい親しくなれた。
半年過ぎてようやく、高校生らしくなれたかもしれない。