絶対領域




チラリと、斜め上を一瞥する。


後ろにちょこんと結われた金髪は、陽気に跳ねてるのに。

ワンレンの前髪では隠し切れない傷跡は、やけに痛々しい。



徐々に治ってきてはいるが、まだ傷は刻まれている。


また巻き込まれたら、その程度では済まされないかもしれない。



最悪な事態にならないよう、一刻も早く紅組の対策を考えなくちゃ。




『なんでもかんでも独りで抱え込むなよ!自分だけでどうにかしよう、なんて考え、やめろよ!』



耳が痛くなる。

またせーちゃんに怒られちゃいそうだな。



今回はバンちゃんとの共同作業だから。


言い訳まがいな屁理屈を並べても、無駄だろうな。




でも、それでも。

皆を傷つけたくないから。


……私自身も。





生徒玄関で上履きをしまい、校舎を離れる。

校門付近が、妙にざわついていた。



「なんだ?」


「さあ?何かあるのかな?」



警戒するあず兄は、咄嗟に私を背中で隠す。


下校する生徒たちの好奇の目が、校門のそばに佇んでいる一人の男の子に注がれていた。



何か、じゃなくて、誰かだったか。

でも一体、どんな人が……?



ちょっと興味がある。


校門付近に近づいて、あず兄の背後から覗いてみた。



< 378 / 627 >

この作品をシェア

pagetop