絶対領域
チラリと、斜め上を一瞥する。
後ろにちょこんと結われた金髪は、陽気に跳ねてるのに。
ワンレンの前髪では隠し切れない傷跡は、やけに痛々しい。
徐々に治ってきてはいるが、まだ傷は刻まれている。
また巻き込まれたら、その程度では済まされないかもしれない。
最悪な事態にならないよう、一刻も早く紅組の対策を考えなくちゃ。
『なんでもかんでも独りで抱え込むなよ!自分だけでどうにかしよう、なんて考え、やめろよ!』
耳が痛くなる。
またせーちゃんに怒られちゃいそうだな。
今回はバンちゃんとの共同作業だから。
言い訳まがいな屁理屈を並べても、無駄だろうな。
でも、それでも。
皆を傷つけたくないから。
……私自身も。
生徒玄関で上履きをしまい、校舎を離れる。
校門付近が、妙にざわついていた。
「なんだ?」
「さあ?何かあるのかな?」
警戒するあず兄は、咄嗟に私を背中で隠す。
下校する生徒たちの好奇の目が、校門のそばに佇んでいる一人の男の子に注がれていた。
何か、じゃなくて、誰かだったか。
でも一体、どんな人が……?
ちょっと興味がある。
校門付近に近づいて、あず兄の背後から覗いてみた。