絶対領域
え。
あの長髪って。
「おっ?ようやく見つけたぞ、萌奈氏!あずき氏!」
……やっぱりオウサマだった。
ざわついていた理由に、納得。
他校生、イケメン、独特なオーラ。
これだけ揃えば、そら注目される。
オウサマは私たちを発見するや否や、優雅に近寄ってきた。
「ハロー、ユーたち」
「こんなところで、何してんだよ」
これまた優雅な挨拶を盛大に受け流して、あず兄は用件を聞き出す。
ほんとになぜ。
西校に一人で来て、何の用?
文化祭は終わったよ?
「萌奈氏をデートに誘いたくてね」
「……はあああっ!?」
あず兄にリアクションを取られた。
で、で、デート?
オウサマご指名で?
なんで!?
意表を突かれてフリーズしていたら、オウサマは本物の王様さながらスッと手を差し伸べた。
「我とデートしてくれぬか?」
うわぁ、紳士的。
背景にバラが見えるよ……。
さらにフリーズする私の耳を、「ダメだ!ぜってーダメだ!!」と猛反対するあず兄の大声が通り抜けていく。
え、どうしよ。
紅組の一件で、あず兄たちにはたくさん迷惑と心配をかけてるし、いつまた襲われるかわからないし。
進展するまでは自重したほうがいいよね。