絶対領域
でもなぁ。
オウサマからのお誘いは初めてだし、断るのはもったいないかも。
うーん……あ、じゃあこの際「あず兄もセットで」を条件にしちゃおうか。
我ながら名案だ。
自画自賛の答えが決まり、返事をしようとした。
……けど。
「いかがかな?」
「……へ?」
尋ねたくせして、オウサマが勝手に自分の手に私の手を乗っけた。
「おおっ、デートしてくれるのか!」
「いやいや、ちょ、待っ」
「光栄だ。精一杯エスコートするゆえ、気兼ねなく楽しんでくれたまえ」
強制なの!?
返事を聞いた意味!!
お誘いも返答も、オウサマのシナリオ通り。
訊くのは上辺だけ。ちっとも人の意見を聞く気がないらしい。
まるで一人芝居を観劇してる気分だ。
「早速、参ろうか」
「ま、参るって、どこに……」
「それではあずき氏、少しの間、萌奈氏を借りていくぞ」
「凰、待て!どこ連れてく気だ!!」
困惑気味の私とあず兄をよそに、オウサマは悠々と私を担いだ。
……そう、担いだ。
左肩に、担がれた。
な、なんでこの抱き方をチョイスした!?
お姫様抱っこかおんぶのほうがマシだった!!