絶対領域





「だが、ユーはアンラッキーであったな」



この偽デートに付き合わされて?


誘った本人が言っちゃうんだ。



「文化祭で熱を出し、ワンウィークも欠席せねばならなかったとは」



あ、違った。

そっちか。


1週間の欠席は、あず兄とせーちゃんの過保護が起因してるんだけど、それは言わないでおこう。




「緋織氏も心配していたぞ」



ドキッ。

鼓動が急激に大きくなる。


オリのことで過剰反応してしまうのは、もう、どうしようもない。




「ほ、本当に?」


「口には出していなかったが、我には容易に汲み取れた」


「いとこだから?」


「それはありえぬな」




オウサマはクツクツと喉を鳴らしながら、あっさり否定した。



文化祭では、ゆーちゃんのクラスの脱出ゲームを、2人のチームワークでクリアした。


今回のもてっきり、いとこ同士の絆で以心伝心してるのかと……。



「実を言うと、いとこ歴はそう長くはないのだよ」


「は?」



いとこ歴とは?

産まれてからずっと2人はいとこなのでは?



「あちらはどうかわからぬが、少なくとも我はいとこの存在など知らずに生きてきた」



……あぁ、困る。



オウサマはいつも、こう。


爆弾をボール代わりに投げ込んでくる。



不意打ちすぎて、本当に困る。

防御してる暇もない。


投げるなら予告して。



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