絶対領域
「外は暗くなってきたし、ひとつ奥の道では何やら騒ぎが起こってるし、小学生を一人にしたら危ないよ」
「だがしかし、あずき氏からユーを守るよう任され……」
「私は自分の身を守れるけど、稜くんは違うでしょ?」
食い気味に返したら、これまた食い気味に横から「お、俺も強ぇよ!」と張り合われた。
強かろうと弱かろうと、稜くんは小学生。
大人に狙われたら、ひとたまりもない。
オウサマも心配してるんじゃないの?
ね?、と困り顔で返事を待てば、オウサマは仕方なさそうに目尻を細めた。
「……あいわかった。ユーの言葉に甘えさせてもらおう」
「それじゃあ、ボディーガードする対象は、私から稜くんに変更ってことで」
ただでさえ紅組の件がある。
稜くんまで巻き込みたくない。
ちゃんと守ってあげてね、オウサマ。
「本日は本当にありがとう、萌奈氏。ではまた、シーユーアゲイン」
「ば、バイバイ」
オウサマはしとやかに、稜くんはぎこちなく手を振ってくれた。
「うん、またねオウサマ、稜くん」
「ユーも気をつけるのだぞ!」
「あいわかった!」
オウサマのものまねをしてみたら、呆れたように破顔された。
遠ざかっていく、2つの背中。
たまにチラチラ振り返る稜くんが見えなくなるまで、ひらひら手を振り返した。