絶対領域
急カーブしたバイクが、来た道を走っていく。
「あー!!」
バイクの運転手の片手に、視線が留まる。
私のカバン、あった!
なんであの人が持って……あ、そうか、そういうことか。
ひったくられたんだ。
さっき転んだのも、あいつのせい。
私のカバンが何をしたっていうんだ。
今日一番の被害に遭ってるのは、しん兄じゃなくて、私のカバンかも。
私をおちょくるみたいに、バイクは私の横を何度も横切っている。
ある路地と坂道からそれぞれ1台ずつ、新たなバイクが登場してきた。
計3台。
どいつもヘルメットをかぶっていないから、素顔が丸見えだ。
ニヤニヤ、へらへらしてて、あれこそ気味悪い。
「その顔面、どうにかしたらどう?」
こんな愚かな真似してないでさ。
そう付け足したら、煽られたと勘違いした3人が殺気を放ち始める。
どうして今日は次から次へと巻き込まれちゃうんだろう。
私、運なさすぎ。
厄日なのかな。
2台のバイクが歩道に侵入してきた。
周りを囲まれる。
これで逃げ道はないって?
バカだね。
私が行動しやすくなっただけだよ。
私の周囲を高速で回り出したバイクを視界の隅に追いやって、タイミングを見計らう。
……よし、今だ!
私に襲いかかってくる前に、手際よくカバンを奪い返した。
「カバン、返してもらうね」