絶対領域
素早さと力の強さで、今度はひったくり犯がバランスを崩して転倒した。
はっはー、ざまあみろ!
天罰だよ!
「クソがっ……!」
逆上したひったくり犯に睨まれたって、痛くも痒くもない。
「クソはどっちよ」
鼻で笑ったら、敵3人はわかりやすく苛立った。
またカバンを盗んだり、バイクを使ったりしてもいいから、まとめてかかってきなよ。
倍返しにしてあげるから。
手招きして余裕ぶる私に、3人がバイクをうならせる。
襲いかかってくる寸前、反対側の歩道から足音が響いた。
何、この足音。
尋常じゃなく速くない!?
「お前ら……」
ひったくり犯たちも足音を不審がり、動かそうとしたバイクを停止させる。
その足音はどんどんこちらに迫り来ていた。
「萌奈に……」
信号のない歩道を渡り、颯爽と走ってくる。
あ、あれは……。
「何してるんだっ!!」
小柄な体が、宙に飛ぶ。
戒めの叱責と共に。
ひったくり犯にドロップキックを食らわしたのは……
「み、みーくん!?」
いつになく立腹している、みーくんだった。