絶対領域





「本当に、ごめん」



ところどころかすれた呟きは、1秒も経たずに融けてしまう。


平均より低い身長が、もっとちっぽけに見えた。



「萌奈には、出会った日からずっと迷惑ばっかりかけてるね」



らしくない、弱音。

混濁された、自嘲。


腕に触れてる大きな手も、今はこんなに、ちっぽけだ。




「いいよ」


「……も、な?」


「気にしなくて、いい」



おもむろにみーくんの背中に回した両手で、優しく1回さすった。



いいんだよ。

迷惑かけても、巻き込んでも。


だって、私にとってみーくんは双雷の総長じゃなくて、“みーくん”だから。



友達、だから。



責任なんて感じなくていい。

苦しまなくていい。


肩の荷を下ろして、楽にしていいんだよ。




「守ってくれて、ありがとう」


「っ、」



少しずつ、少しずつ、みーくんの手から力が抜けていく。


離れかけた手は、すぐに私の背中にしがみついた。



「萌奈、ありがと」



抱き寄せて、首筋に埋められた唇じゃ、ほとんどくぐもっていて明瞭には届かない。


それでも、冷えた身体には、とても温かかった。




「いつか必ず、恩返しするから。俺が萌奈を、守るから」


「あああああっ!!!」



元々聞こえづらい囁きを、さらにぼやかされた。



< 426 / 627 >

この作品をシェア

pagetop