絶対領域
「本当に、ごめん」
ところどころかすれた呟きは、1秒も経たずに融けてしまう。
平均より低い身長が、もっとちっぽけに見えた。
「萌奈には、出会った日からずっと迷惑ばっかりかけてるね」
らしくない、弱音。
混濁された、自嘲。
腕に触れてる大きな手も、今はこんなに、ちっぽけだ。
「いいよ」
「……も、な?」
「気にしなくて、いい」
おもむろにみーくんの背中に回した両手で、優しく1回さすった。
いいんだよ。
迷惑かけても、巻き込んでも。
だって、私にとってみーくんは双雷の総長じゃなくて、“みーくん”だから。
友達、だから。
責任なんて感じなくていい。
苦しまなくていい。
肩の荷を下ろして、楽にしていいんだよ。
「守ってくれて、ありがとう」
「っ、」
少しずつ、少しずつ、みーくんの手から力が抜けていく。
離れかけた手は、すぐに私の背中にしがみついた。
「萌奈、ありがと」
抱き寄せて、首筋に埋められた唇じゃ、ほとんどくぐもっていて明瞭には届かない。
それでも、冷えた身体には、とても温かかった。
「いつか必ず、恩返しするから。俺が萌奈を、守るから」
「あああああっ!!!」
元々聞こえづらい囁きを、さらにぼやかされた。