絶対領域
仕合わせな傷痕
真夜中0時を過ぎた。
家族が眠った家は、やけに閑散としている。
夜遅くても関係なしにたまり場に居座ることの多いせーちゃんも、今夜は自分の部屋でぐっすり寝ている。
今日のたまり場、主に幹部室は、重たい雰囲気が漂っていた。
皆、難しい顔をして、双雷と神亀の下っ端たちの異変について話し合った。
下っ端たちに事情聴取もしたが、「俺らに任せてください」の一点張り。肝心の内容については口を割らなかった。
話し合いは一向に進まずに、各自情報収集と下っ端たちの観察を課題を設けて、今日のところは解散となった。
皆、疲労感でいっぱいだった。
かくいう私も。
……だけど。
「眠れない……」
うまく寝付けずに、ベッドに腰掛ける。
壁にかけてある白鳥の衣装をぼんやり眺めながら、オルゴールを奏でた。
ショパンの「別れの曲」は、飽きるほど聴いた。
耳に馴染みすぎたメロディーに、まあるい月も嗤っている。
今宵は、満月。
どこも欠けてはいない、綺麗な月夜。
“あの時”と、同じ。
なぜか涙が止まらない。
鼻の奥がツンとする。
心臓の感嘆を蹴散らしたくて、カバンから携帯を探した。
皆の笑ってる写真でも見て、元気出さなくちゃ。
……って、あれ?
「携帯が、ない?」