絶対領域
多少は蠢いていた眠気も、一気に冴えていく。
ついでに涙も引っ込んだ。
あれ?あれれ!?
どこを探してもない。
なんで!?
「最後に使ったのいつだっけ……」
えーと、えーと……確か、レストランであず兄からの鬼履歴を確認して、カバンにしまったはず、だよね?
なのに、ない!どこにも、ない!
「……あっ、もしかして、落とした!?」
あり得る。
カバンはいろいろと巻き込まれたし。
自転車のスピードを落とそうと投げた時?
それとも、ひったくられた時?
どっちにしろ、落とし場所は同じ。
親切な人が交番に届けてくれてる可能性もある。
「携帯がないと不便だし、今から探しに行っちゃおうかな」
眠れないし、携帯の行方が気になるし。
うん、そうしよう。
パジャマから、楽ちんな白のパーカーワンピースに着替える。
外は寒いだろうから、一応上着も羽織って、髪を軽く梳かした。
善は急げだ。
オルゴールの上で天使と悪魔を踊らせたまま、家族に……特にせーちゃんに気づかれないように静かに家を出た。
肌寒い秋の匂いに、清々しくなる。
ぶるっと震えた体を縮こませて、上着のポケットに手を突っ込んだ。