絶対領域
ささっと行って、見つけて、帰ってこよう。
せーちゃんにバレたら、大変だ。
人気のない道をたどって、繁華街に近づいていく。
チカチカとネオンの光が、視覚を刺激してきた。
あちこちから轟いているバイクの暴走は、聴覚を虐げる。
大通りを避けて歩いた。
紅組の件だけでなく、下っ端の件もある。
あんまり目立ちたくないし、また巻き込まれるのもごめんだ。
「こっちの道だったっけ……?」
見知った坂道が見えてきた。
お、当たってた。
この道だ。間違いない。
歩道にバイクが突っ込んできた跡も、くっきり残っている。
「携帯、落ちてないかなぁ」
街灯の明かりだけじゃ、見えづらい。
しまった。
懐中電灯とか持ってくればよかった。
ここは目を凝らすしかない。
ぐっと眉をひそめて、夕方通った箇所を手あたり次第に探してみる。
「どこだろう……」
すぐに帰る計画が、早くも崩れそう。
おーい、私のけーたいー。
出てこーい。主【アルジ】はここだぞー。
ふと、歩道の端っこから、無機質な音色が鳴り出した。
これって……私の携帯の着信音だ!