絶対領域




ささっと行って、見つけて、帰ってこよう。

せーちゃんにバレたら、大変だ。




人気のない道をたどって、繁華街に近づいていく。



チカチカとネオンの光が、視覚を刺激してきた。


あちこちから轟いているバイクの暴走は、聴覚を虐げる。



大通りを避けて歩いた。


紅組の件だけでなく、下っ端の件もある。

あんまり目立ちたくないし、また巻き込まれるのもごめんだ。



「こっちの道だったっけ……?」



見知った坂道が見えてきた。


お、当たってた。

この道だ。間違いない。


歩道にバイクが突っ込んできた跡も、くっきり残っている。




「携帯、落ちてないかなぁ」



街灯の明かりだけじゃ、見えづらい。


しまった。

懐中電灯とか持ってくればよかった。



ここは目を凝らすしかない。


ぐっと眉をひそめて、夕方通った箇所を手あたり次第に探してみる。



「どこだろう……」



すぐに帰る計画が、早くも崩れそう。


おーい、私のけーたいー。

出てこーい。主【アルジ】はここだぞー。




ふと、歩道の端っこから、無機質な音色が鳴り出した。


これって……私の携帯の着信音だ!




< 430 / 627 >

この作品をシェア

pagetop