絶対領域




着信音に引き寄せられ、道の端に移動していく。



「あ、こんなところにあった」



あるお店の前に置かれた植木鉢の裏に、携帯が追いやられていた。


バイクが歩道に突入してきた拍子に、こんな隅っこの物陰に飛ばされてしまったのかもしれない。



ブルブル振動している携帯は、汚れていて、画面も割れてしまってる。


電話はかかってきている通り、壊れてはいないようだ。


この程度の損傷なら、買い替える必要もない。



無事に携帯が見つかってよかった。

一息ついていたら、着信音が途絶えた。


「あ」


切れちゃった……。



履歴を確かめてみる。


一番上に表示されているのは、「素野万」。



「こんな夜遅くに、バンちゃんから電話?」



珍しいな。

急用?……だったら早くかけ直さなきゃ!



慌ててリダイヤルする。


3コール目で、電話がかかった。




『もしもし、萌奈ちゃん?』


「バンちゃん!さっき電話出れなくてごめん!」


『あはは、いいよ。こっちこそ夜分遅くにごめんね?』


「それは全然かまわないんだけど、何の用?」




いつもの穏やかな声とは、ちょっと違う。


硬くて、強張ってるような……。




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