絶対領域




想起するのは、倉庫に監禁された日のこと。


あの時電話越しに聞こえたバンちゃんの声色と、今の声色が似ていて、不安になる。



『今日、たまり場で下っ端の不審な行動について話し合ったじゃん?』


「うん。それで情報収集と観察をしようって……あ、もしかして、もう情報集められたの?」


『まあね』



課題を出されたばかりだよ?

紅組の件もあるのに、すごいな。



「さすが悪魔」


『からかうなよ』



カラカラと乾いた笑みが、ノイズ混じりに響く。


飄々とした様子は感じられない。

必死に憂いやら激情やらを抑え込んでいる。



『自分の族と親しい奴らのいる族の下っ端のことだし、簡単に調べられると思ったら、結構時間がかかっちゃった』


「バンちゃんが手こずるほど、今回の件ってやばいの?」


『下っ端たちじゃなくて、その裏で操ってる黒幕がやばかったんだ』



黒幕?

そんな奴がいたの?



「その、黒幕って……?」



星屑がひとつ、流れて散った。


どんなにかすかでも、ひとつのきらめきが消えた夜空は、なんだか物足りない。



暗闇の領域が広がれば広がるほど、息苦しくなるのは、なぜ?




『――紅組だ』




ドクンッ。

皮膚を突き破る勢いで、心臓が疼く。


胸の下あたりが、痛くなってきた。



……やっぱり。



バンちゃんから真夜中に電話をかかってきたから、なんとなく、予感していた。


紅組についての連絡だろう、と。



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