絶対領域
血まみれの片翼
夢を、見た。
“あの時”のエンドロール。
BGMは、ショパンの「別れの曲」。
『オリっ!!』
闇に消えた、オリの背中。
がたついた足じゃ立つこともできなくて、手を伸ばすしかなかった。
当然かすりもしなくて、空を切るだけ。
月の光が淡くなってきてようやく、足の力が戻ってきたけれど、追いかけはしなかった。
不器用な優しさを無下にできるほど、私は強くなかった。
わんわん泣いた。
まともに声も出せなかった。
表現しようのない気持ちを抱えて、ゆっくりと公園を離れていった。
鮮やかな桜が、残酷なくらい綺麗で。
涙で霞むくらいが、私にはちょうどよかった。
おぼつかない足取りで、1年振りに家に帰った。
一番にせーちゃんが出迎えてくれた。
『ね、えちゃ……?』
携帯ではごくたまに一方的にメールをするだけだったから、せーちゃんの顔を見るのも声を聞くのも懐かしくて、余計に涙があふれた。
せーちゃんは私だと認識するなり、朝方など気にも留めずに叫び散らした。
『い、今までどこほっつき回ってたんだよ!!』
『……ごめん』
『皆、心配してたんだぜ!?』
『っ、ごめん、ね』
『なんで急にいなくなっちまったんだよ!』
『ごめ、っ……』