絶対領域
そりゃ初めから認めてくれないよね。
だけどね。
いつもと態度が違う時点で、こっちは確信しちゃったんだよ。
「テキトーでも、イカれたわけでもないよ」
普段なら強気に言い返すはずのせーちゃんは、今日は黙り込んでいる。
他の皆もそう。
信じられないと言わんばかりに、眺めるだけ。
ただ一人、“悪魔”を除いて。
「双雷と神亀の悪い噂を流したのも、新人いびりに見せかけて襲わせたのも、以前私にひったくりを仕掛けたのも、決闘を企てたのも、西側の倉庫でナイフを飛ばし、照明を割り、私を殴ったのも全部……ランちゃんだよね?」
「んなのデタ」
「双雷と神亀を潰そうとしたんでしょ?」
デタラメじゃないよ。
わざとかぶせて畳みかける。
「紅組として」
紅組。
本当は明かすつもりなかった。
口に出すことすら、恐ろしくてたまらない。
「なっ……!?」
「く、紅組って……っ」
言わずもがな周囲はざわついた。
さっきとは違う。
戦慄めいていて、青白く怯えてる。
視界の両角にぼんやりと、オリと、たった今洋館内に入り壁に寄りかかったオウサマが見えた。
2人して、驚きを隠せずに、惑乱していた。
どこからか、ヒュッ、と喉が絞まる音がした。
「ランちゃんが首謀者なのか、命令されてるだけなのかはわからないけど、裏切ってることには変わりない」
「そんなに言うなら証拠があるんだろうな?」
またどよめきが消えていく。
幼さの残ってる顔立ちは、いやに固く引きつっていた。