絶対領域
「たくさんあるよ」
ランちゃんを責めるようなことを言う度に、胸が締め付けられていく。
表情に出てないと、いいな。
「例えば、噂。特に双雷では、ランちゃんから噂を聞いたって人が多いんじゃない?それに、ひったくりさせる合図、ランちゃんが出したでしょ?私にも聞こえたよ、ランちゃんの声。それから、3日前の乱闘中、何度もランちゃんを見かけた。紅組の一員ってだけあって気配を消すのは長けてたようだけど、さすがに他にも目撃した人がいるんじゃないかな」
その、尖った、金の目。
見つけてしまった時の私の気持ち、わかる?
ランちゃんじゃない。裏切り者じゃない。そうじゃない。違う。違う!
そうやって否定すればするほど、証明ばかりされていった。
それがすごく、苦しくて。
できることなら一生抗っていたかった。
「私が目を覚ました時、ランちゃんは一番最初に私を非難したのだって、罪を私になすりつけようとしたからでしょ」
あの時のランちゃんの気迫は、凄まじかった。
思えば、ランちゃんと面と向かったのは今日じゃなくて、その時が初めてだったな。
『ここで争いが起こったのも、倒れてる奴も、血を流してる奴も、全部全部お前のせいだ!』
何もかも忘れていた私にとって、あの言葉はひどく重たくのしかかった。
だから気づかなかったんだ。
どうしてランちゃんだけ、ああ断言できたのか。
幹部以上のメンバーは、私やみーくんが気絶してから到着したはずなのに。
「……で?」
ビクッとした。
目の前の金色が、だんだんと暗く陰っていく。
「それだけ?」
「く、紅組に属してるから、中学生なのに双雷に入って早々幹部になれたんでしょ?」
「神亀にだって、中学生で幹部になってる奴がいるじゃねぇか」
先ほどよりも確かに、焦りが滲んできているのに。
私と、同じ。
平静なフリをして、こらえてる。