絶対領域



「お、俺、は……っ」


辛そうに、歯がゆそうに。

せーちゃんは俯いたっきり何も言わない。



「お前の言う証拠は、証拠って言わねぇよ!偶然かもしんねぇだろ!?」



まるで自分にそう言い聞かせてるみたいに、叫び散らす。


手にしたまんまのヘルメットを、思い切り強く投げてきた。



ソレは私の顔横すれすれを横切って。


ちょうど真後ろ。

受け止めた音が、綺麗に鳴った。



「じゃあ俺からもいい?」



ヘルメットを脇に抱えて、バンちゃんが一歩前に躍り出る。




「万……お前……」


「悪い、あずき。慎士や悠也、世奈も、秘密にしててごめん。ほんとは俺、全部知ってたんだ。萌奈ちゃんと一緒に、皆の盾になろうって、隠してた」


「……それが、今のお前の、正義だったのか?」


「たぶん、ね」




狼狽しながらも少しずつ受け入れていくあず兄に、バンちゃんは軽やかにヘルメットを投げ渡した。


そして、私の代わりに、これまで隠してきた真相を語ってくれた。




新人いびりをきっかけに、紅組が関わっていることを知ったこと。

情報操作をされ、双雷と神亀を敵対関係にさせていること。

下っ端を洗脳してる、裏切り者が存在していること。

それがランちゃんであろうこと。

無意味な決闘を食い止めるべく、私が独りで乗り込んだこと。

そうするしか他に方法がなかったこと。




私を気遣ったのか、私の正体や過去に関する内容は一切話されなかった。


淡々と把握している情報を述べていく。


< 558 / 627 >

この作品をシェア

pagetop