絶対領域


否定、しないんだ……。


ランちゃんの内に潜めんでいたほころびが、だんだんとあらわになってきた。



「蘭次郎が気づいてたことに、俺は気づいてたよ。……その時から、疑っておけばよかった」



私は全然気づかなかった。

クレオメとショーに夢中で。


あれも一種の油断だった。



「秘密の時間……つまり、萌奈ちゃんが行方不明だった、1年の空白。それを知っていなければ、本当の意味を読み取れない」



あず兄とせーちゃんは今、どんな表情をしているんだろう。


怖くてそっち向けないや。



でも、全部告白するって、決めたから。

もう逃げないし、隠さないよ。


きっとそれがオリのためにもなる。



私だけじゃなく、皆で守るんだ。



「紅組の者なら、情報力も群を抜いているし、簡単に他人の秘密を調べられる。実際、数多くの“切り札”を握ってるしね」


「……何が言いたい」


「逆に蘭次郎がただの中学生だったら、ただの双雷の新人だったら、萌奈ちゃんの秘密を知ってるわけがないんだよ」



ランちゃんの眉間に数本のシワが作られた。


喧嘩腰な威嚇は、依然としてそのまま。



洋館内をきらびやかに照らす、嫌いな色の日差しがやけに焦げていて、煩わしい。


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