絶対領域
「それが本当でも嘘でも、俺にとっちゃどうでもいいんだよ!だから何だよ!んなのが証拠?ふざけんな!俺は認めな」
「……それなら、俺も切り札を使おう」
い、と言い切る前にランちゃんは喚くのをやめ、当惑げに眉間のシワをさらに増やした。
ランちゃんと、バンちゃん。
2人の温度差が明白に目立つ。
「切り札があるのは、何も紅組だけじゃないんだよ」
“悪魔”にも、切り札が?
一体、どんな……?
「な、なんだよ!言ってみろよ!」
情緒不安定な挑発に、あの悪魔が煽られるはずがない。
いつの間にか優位が逆転していた。
「対立直前にようやく調べられたんだ」
「な、何をだよ!」
「蘭次郎の、苗字を」
「……は?」
ボロボロ、ボロボロ。
みるみるうちに、強がりが剝がれ落ちていく。
「な、なんで、お前なんかが苗字を……!?」
ランちゃんは取り乱し、耳についたたくさんのピアスをジャラジャラ鳴らす。
そういえば、今までずっとランちゃんの苗字を誰も知らずに過ごしてた。
だけど単なる苗字が、なぜ切り札なの?
なぜあそこまでランちゃんを追い込めたの?
理解不能でちんぷんかんぷんな私を含めた周りをよそに、バンちゃんはランちゃんとオリを視界の枠に収めた。