絶対領域
「――野々塚 蘭次郎」
背筋にビリッ、とした衝撃が走った。
一瞬言語を忘れ、口だけをパクパク開閉させる。
音のない世界に包まれる。
無意識的にオリのほうに視線を送った。
オリも、私たちと同じだった。
驚愕以外の何ものでもない。
喉の奥らへんが苦しくなって初めて、呼吸していないことに気づいた。
すぐさま酸素を吸い込めば、その音が大きく洋館に跳ね返ってしまった。
「それが、蘭次郎、お前の名前だろ?」
「……野々塚って……緋織と一緒じゃないか」
「うん、そうだよ。偶然なんかじゃない」
なんとか呟けたしん兄に、バンちゃんは唯一冷静に佇む。
「昔紅組の一員だった緋織と、同じ苗字だ」
え、の一音もあふれないくらい、皆の感情と思考が追い付いていない。
私もそのうちの1人だ。
野々塚、蘭次郎。
オリと同じ苗字の、男の子。
それってつまり。
まさか、本当に……?
「これは証拠になるか?」
ぐちゃぐちゃな関係をひも解いた先に、何が待ってる?