絶対領域
「双雷とか関係ねぇよ。たまたま喧嘩相手が双雷にいたってだけだろ」
「……裏切ったことに変わりねぇよ。双雷だけじゃなく神亀まで巻き込んじまったし……」
「名目上は兄弟喧嘩だろ?そのために巻き込んだだけじゃねぇか。なら、謝ればいいんだ」
「謝って済む問題じゃ……」
「無理ならもっと謝りゃいい。それでもダメなら、他の償い方法を探すことだな」
先程と立場が逆転してる。
……ううん、庇ってる。
自由になりたがっていた、あのオリが。
ランちゃんに威勢はない。
だけど、ランちゃんから憎しみや寂しさを取り除けたわけでもない。
「俺からしたら、お前のほうがバカだよ」
骨ばった手が伸びる。
ランちゃんは殴られると思ったのか、条件反射で固く目を瞑った。
「罪悪感と孤独感に葛藤しながら、何もかも犠牲にして……俺よりお前が苦しんでどうすんだよ。不器用すぎだろ」
「っ、」
親指で、涙を拭う。
恐る恐る開かれた金の目は、わずかに丸くなっていた。
オリも十分不器用だよ。
「最初っから、俺にぶつかってこいよ。八つ当たりだって愚痴だって、なんでもいい。そっちのほうがよっぽどクる」
嘘つき。
“あの時”も今回も、キてたくせに。
やっぱり兄弟だね。