絶対領域
双雷の仲間に頼られても、初めてのことで内心困ってたんだよね。
ココと紅組じゃ、何もかも違いすぎる。
だから、気づかなかった。
気づいても、確信できなかった。
本当ならありふれているはずの、優しい矛盾に。
「俺、は……っ」
人のせいにすれば楽だけど。
きっと、ランちゃんにとっては、枷鎖でしかなかった。
「……寂しかった」
ポタリ。
震えてる手の上に、一粒の涙が滲んだ。
「兄貴のくせに、弟一人残してどっか行ってんじゃねぇよ……っ!」
精一杯手に力を込めて、ぐらぐら揺らす。
明るいバイオレットの後ろ毛がふわりとなびいた。
「さっさとそう言えよ、バーカ」
「痛っ」
ランちゃんの形のいいおでこの真ん中に、デコピンがクリティカルヒットする。
ジーンと響いて、痛そう。
「すぐに家族とは思えねぇけど、それでも唯一無二の関係だろ?寂しがってる弟に、冷たくしたり嫌がったりしねぇよ」
遠回りしすぎだ、バーカ。
と、もう1回デコピンした。
「俺は、嬉しかったぜ?」
「え?」
「方法は間違ってるけど、こうやって会いに来てくれて」
ランちゃんの瞳が潤んだのは、デコピンのせいではないだろう。