絶対領域
愛おしい記憶
もがき苦しんだ、長い長い兄弟喧嘩が、終わった。
よかったね。
オリ、ランちゃん。
しばらくして号泣が止んできた頃。
傍観を貫いていたオウサマがランちゃんに近寄り、ポンと肩に手を置いた。
顔を上げたランちゃんに、オウサマは何も言わずに扉側を示す。
「あ……」
それだけで汲み取り、手の甲で涙をごしごし拭った。
立ち上がると深呼吸をして、下っ端たちの前へと移動する。
覇気も殺気もない、いたいけさ。
その中に見え隠れしてる、緊張と誠意。
強がっていた嘘つきなランちゃんは、もうどこにもいない。
「ごめん……すみませんでした!!!」
膝に顔がつきそうなほど、深々と頭を下げた。
「謝ったって、俺のしたことが無かったことになるわけじゃねぇし、許されるとも思ってねぇ。自己満足だって言われても、何も言い返せねぇ」
ついさっきまで泣いていたせいだろうか。
声のトーンはガタガタで格好つかない。
でも、凍てついているより、ずっと心地いい。
「だけどこれから俺なりに償っていく。償わせてくれ!俺がしてきたように、俺を憎んでたっていいから……だからせめて、双雷と神亀、お互いのことは許してやってくれ」
ちっぽけな背中をもっと縮こませる。
アッシュグリーンの髪に、綺麗なオレンジが差し込んだ。
「どうか、俺をこのまま、双雷にいさせてくれ……ください!!」