絶対領域
数秒の沈黙。
全ての音が消える。
ずっと頭を下げたままのランちゃんに、下っ端たちは少なからず動揺し、驚いていた。
「い、」
一番最初に声を上げたのは、
「い、いいです、よ!」
意外にも、ゆかりんだった。
小心者なゆかりんを後押しするように、私は拍手をした。
賛同の意思は徐々に広まっていった。
大きな拍手の嵐に、ランちゃんはおずおずと頭を上げていく。
あ、また泣くんじゃないの?
ってくらい、顔つきは情けなくほぐれていた。
「み、皆……っ」
ランちゃんは皆のことを見渡すと、唯一拍手していない人物と目が合った。
みーくんだ。
「蘭次郎」
珍しくみーくんは険しくて真面目な面持ちで、思わず拍手をやめた。
「そ、総長……お願いします!!」
ランちゃんはみーくんの目の前に駆け寄り、また頭を下げた。
逆にみーくんは天井を仰ぐ。
「裏切り、って嫌な言葉だよな」
「……っ」
「でも確かに、緋織の言う通り、これって兄弟喧嘩なんだよな」
「え……」
「それなら、責任取るとか双雷抜けるとか、しなくていいよな!」
ランちゃんの視線は、上へ。
みーくんの視線は、下へ。
ちょうど真ん中で交われば、たちまち笑顔になる。