絶対領域
ふーん?
ちょっと喧嘩しただけ、ねぇ?
そうやって素っ気なくごまかしたって、お母さんにはバレバレなんだからね。
「傷だらけでも綺麗な顔してて羨ましいわ」
「朝っぱらから毒舌になんなよ」
「え?」
「……これだから天然は……」
実はあーくんは、神亀の12代目総長。
現在、神亀は、裏の世界のトップにまで上り詰めた。
双雷も同様に、全国トップクラスの実力と謳われている。
そんな最強なグループの頂点にいるあーくんが、あんなに傷を負っているということは……。
おそらく昨日、夏休み最終日に、双雷と戦ったんだろうな。
私たちの世代が託した関係を、ちゃんと繋いでくれているんだ。
「喧嘩はどうだったの?本気で戦えた?」
「……うん、まあ、いい喧嘩だった」
「そう。それならよかったわ」
勝敗はどうなったのだろうか。
敵対関係はどう変わったのだろうか。
聞こうとしたら、ジュウゥ、と焦げた音が響いた。
慌ててフレンチトーストを裏返す。
ふぅ、セーフ。失敗しなくてよかった。
ホッとしていたら、スーツ姿のみーくんがダイニングに入ってきた。
「おはよ、父さん。コーヒーいる?」
「おはよう。うん、もらおうかな」
「アイス?ホット?」
「アイス」
「了解」
父と子の仲の良さにほっこりしつつ、朝食をお皿に盛っていった。