絶対領域
繁華街に到着し、大通りをたどっていく。
夏休み明けだというのに、意外と混んでいてびっくりした。
ランチ場所まであと少しだ。
あの子はもう来てるかな。
無意識に浮足立つ私の横を、男子2人組が通り過ぎた。
片方は、オレンジのメッシュを入れた金髪。
もう片方は、青色が浮かぶ、こげ茶色の髪。
どちらもあーくん同様に、顔や腕に傷をつけていた。
「昨日はいろいろとすごかったな。そのせいで夏休み明け早々、寝坊しちまったし」
「何時間も戦ったのに、決着つく前に体力の限界が来るとは思わなかったぜ。まだ体が痛ぇ……」
「つまり双雷も神亀もすげぇってことだろ」
「ははっ、確かにな!」
え……?
双雷と、神亀?
反射的に振り返る。
見るからに不良らしき2人は、後ろにいる私のことなど気にも留めずに、盛り上がっていた。
「でもまさかあそこで、双雷と神亀を一緒にさせるっつー案を出すとは……さすが双雷の総長」
「双雷の総長と神亀の総長がどちらとも総長のまま、ツートップでやっていくのもなんかいいよなっ」
脳裏に、あーくんの傷だらけの顔が過る。
……あぁ、そうか。
あの傷は、そういうことだったんだ。
「双雷と神亀が合体して、神雷【ジンライ】っていう新しい名前になったはいいけど、正直まだ慣れねぇな」
「そうか?俺は神雷って名前、かっこよくて気に入ってるぜ?」
神亀の「神」に、双雷の「雷」。
合わせて、神雷。
いい名前だね。