絶対領域
どれだけ速く走っても、“あなた”に追いつけない。
偶然?
尾行を察知された?
“あなた”の真意は、何?
知らぬ間に、繁華街を抜けていた。
先ほどまで混雑していたのが嘘みたいに、閑散としている。
「ちょっとぉ、どこまで行くのー!?」
「黙って姉ちゃんについていけ、ぶりっ子」
「本当に、どこまで行く気だ?」
ゆーちゃんとせーちゃんが喧嘩する前に鎮めながら、しん兄が辺りを窺う。
「そろそろやばいな……」
「どうかしたか、万」
奥に進むにつれ、バンちゃんの顔色が曇っていく。
あず兄の問いかけに、密やかに口を動かした。
「ここら辺は、ある族のテリトリーなんだ」
「ある族って……?」
バンちゃんが何か答えるより先に、「あっ」と私の声が弾む。
ある建物に入っていく“あなた”の姿を、目撃したのだ。