絶対領域
驚愕でいっぱいだった気持ちに、警戒心が加わる。
この男の子が“あなた”の知り合いなのは、間違いないみたいだ。
「ここまで来るってことはそれなりの用なんだよね?」
「え……」
ど、どうだろう。
思いっきり私情なんだけど。
「外で話を聞くよ。皆、出てきて」
「皆?」
学ランの男の子が右手を挙げ、わずかに指を前に折る。
それを合図に、洋館のホールに身を潜めていた『皆』が、続々と現れた。
横にずれた私より先に、彼らは神亀のメンバーのほうへ優雅に歩いていく。
「……っ、あ」
洋館から最後に出てきたのは、“あなた”だった。
“あなた”が私を通り過ぎる時。
“あなた”は確かに、私を見た。
夜空を切り取ったみたいな、藍色の瞳。
たった一瞬だけだったけれど、いとも簡単に吸い込まれてしまった。