絶対領域
「……みーくん、だって?」
ギロリ。
翠くん……じゃなかった、みーくんの背後から、ただならぬ悪意が飛んできた。
他でもない、私めがけて。
「んな気色悪ぃあだ名で、総長を呼ぶんじゃねぇ!」
……あ、こいつも暴れ馬か。
理解した。
ただし。
「文句があるなら、みーくんの後ろから出てきなよ」
せーちゃんやあず兄と違って、人見知りが激しいようだけど。
「ただの臆病者?」
「なっ、なんだと……!」
「いちいち腹を立ててもキリがねぇぞ。萌奈の毒舌は、天然だからな」
未だに私を自分の所有物アピールするあず兄の一言にムカついて、無理やりあず兄の腕をはぎ取った。
余計なこと言わないでよ。
別に毒舌じゃないでしょ。普通だよ普通。
「っ、お前こそ、姉ちゃんに盾突くんじゃねぇ!」
私と同じタイミングで、口元を密封していたバンちゃんの手をどかしたせーちゃんが、威勢よく息巻く。
わあ、暴れ馬対決だー。
すごーい。
……なんて、他人のフリをしている場合じゃない。