絶対領域
このいがみ合いが、本格的な闘争に発展する前に止めなくちゃ。
双雷と神亀のお互いのためにも、ね。
こんなところまでわざわざ喧嘩しに来たわけじゃないんだし。
「ちょっといい加減に……」
「無駄に火種を撒いてどうすんだ」
「うにゅっ!?」
「やめろ」
「いった……!」
私が動く前に、しん兄と“あなた”が先手を取った。
しん兄は、せーちゃんの両頬を片手で掴んで。
“あなた”は、人見知りな暴れ馬くんにげんこつを食らわした。
そのおかげで、両者ともにおとなしくなる。
「うちのがすまん」
「いや、こっちが先に喚いたせいだ」
……なんか、新鮮だ。
しん兄と“あなた”が話してるなんて。
「俺は、千間慎士。高3。神亀の幹部だ。……で、こいつは、」
「矢浦世奈。同じく幹部。中3。ちなみに矢浦萌奈の弟!」
しん兄の手から必死に解放されようと奮闘しながら、せーちゃんはなんとか自己紹介をした。
まあ、両頬をつぶされてるせいで、滑舌は最高に悪かったけど。
ていうか、最後の弟宣言、必要だった?