絶対領域
ランちゃんが猛犬なら、ゆかりんは産まれたばかりの子犬。
そんなイメージだ。
双雷の幹部以上の面々って、こんなに個性豊かなんだ。
……あ、それは神亀も同じか。
「さ、自己紹介も済んだし、帰るぞ」
「え!?」
凝りもせず再び私の肩に腕を回してきたあず兄が、突然そう言って、来た道を引き戻し出す。
「い、いやいや、自己紹介が終わっただけじゃん!特に何もしてないじゃん!普通ここから何か会話を……」
「必要ねぇ!」
「そうだよ、姉ちゃん!赤だか青だか知らないけど、あいつに近づいたらダメだ!」
せーちゃん、せめて名前を覚えてあげて。
赤でも青でもなく、翠だから。
「姉ちゃんにつく虫は、俺が全部撲滅してやる」
「やめて、物騒な言い方しないで」
「姉ちゃんには俺たちがいればいいんだ!」
弟に愛されて嬉しいよ?幸せだよ?
でもね?
もっと視野を広げて。
私にも交流させて。