絶対領域
横で、せーちゃんはベーっと舌を出す。
みーくんは何も見えていないみたいにスルーして、私に笑顔で手を振ってくれた。
オウサマとランちゃんは、警戒と観察を。
ゆかりんは、ゆーちゃんと離れて安堵を。
そして、オリは。
「……萌奈」
ポツリ。
小さく私の名前を囁いて、“あの時”の回想をしていた。
大嫌いな紅の色に塗れた、夕暮れ。
闇はすぐそばにあって。
紅の色も、もうすぐ月夜に侵食される。
あず兄の腕に連れ去られ、あっという間に洋館が見えなくなった。
みーくんに懐かれた理由は、さっぱりわからない。
だけど、彼の漆黒の瞳が、ひどくきらめいていて。
オリの瞳が夜の空だとしたら。
みーくんの瞳は、一番星だな、と。
思って、すぐ、かき消した。