絶対領域
オールバックの男の子が、眉間にシワを寄せた。
明らかに、怒っている。
……私のせいで。
「ここで何があったのか、憶えてないの?」
オールバックの男の子の対局の位置にいる人が、困惑しながら問いかけた。
薄い赤茶色の髪の先を、ピンクと紫が混ざったみたいな色で染めている、その男の子と、目が合う。
「……は、はい」
たった2文字を絞り出すほか、できなかった。
全員が、信じられないと言わんばかりに愕然としていた。
信じられないのは、私も同じなのに。
知らない人、知らない場所に囲まれて、怖い。
心細さに、せーちゃんの裾をきゅっと掴んだ。
「それって、記憶喪失……?」
オールバックの男の子の横にいる、気弱そうな男の子の呟きがやけに反響した。