絶対領域
別に私をいやらしく見てる男の子なんか1人もいないのに、せーちゃんのフィルターがかかりすぎている被害妄想を、あず兄は信じ切っている。
繁華街の大通りを進まず、宣言通り、路地に入った。
「あ、そうだ。ねぇ、あず兄、オルゴールありがとね」
そういえばまだお礼を言っていなかった。
感謝が唐突すぎたのか、あず兄はプイとそっぽを向き、照れ臭そうにした。
「あのオルゴール、あずき兄さんからのプレゼントだったんだ。へぇー、ふーん、そーなんだ」
「な、なんだよその目は」
「こんな近くに姉ちゃんをいやらしい目で見る奴が……」
「はあ!?み、見てねぇし!」
「プレゼントなんかして点数稼ぎしてる時点でアウトだよ!」
「た、ただ、気分で贈っただけだろうが!」
お礼を言っただけなのに、なぜ低レベルな口喧嘩が勃発してしまうんだろう。
アレかな、喧嘩するほど仲がいい、的なやつ。
うん、そう思うことにしよう。仲良きことは美しきかな。